~欲求系組織理論~
マズロー(A. Maslow)が提唱した自己実現を目ざす人間存在を仮定する欲求階層理論は、経営の世界にも大きな影響を与えました。マグレガー(D. McGregor)のX理論・Y理論も、研究の系譜としてはマズローに連なるもので、欲求系組織理論ともよばれます。
欲求系組織理論は、欲求やパーソナリティの成長を基本に据えた理論であり、組織と個人との関係をパーソナリティの側面から論じた、アージリス(C. Argyris)の研究もよく知られています。
アージリスは、人のパーソナリティは自己実現に向かって発達成長していく有機体であるととらえ、幼児の状態から成人の状態へと向かう連続体上で、以下の7つの次元を強調しました。
アージリスによれば、組織成員はこの連続体上を未成熟段階から成熟段階に向かって成長し、自己実現に近づいていきます。したがって組織としては、成員が自己実現を目ざすことのできるプロセスと組織目標の遂行プロセスが合致するような施策をとることが重要になります。
そうした施策の一つとしてアージリスがあげたのが職務拡大です。これは、仕事の幅を広げることによって、組織成員が本来もっている能力の中で認知的、情緒的な側面を活用する機会を増やすことを目的とする施策です。アージリスは具体的に、①組織の意思決定への参加制度の導入、②自分の仕事の質に責任が負えるような職務編成、③フィードバック制度の導入、④仕事の流れや基準に自分の考えが活かせる自己調節システムの導入、の4つの職務拡大を提唱しています。
これらは仕事を水平的に広げていくだけではなく、仕事に深みをもたらすものでもあります。つまり、職務拡大には水平的な拡大と垂直的な拡大の2つの面があるということです。