代表的な思い込みの心理は以下の5つに分類される。
ステレオタイプ
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一部の特性で人を分類し、その分類に一般的であると考えられる特性をあてはめる
(例)「最近のゆとり世代は-」「とかく近頃の若者は-」
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ハロー効果
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全体的な好悪の感情が細部の判断に影響を及ぼす
(例)英語のできる人であれば優れたビジネスパーソンであると評価する
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包装効果
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1つの特徴があれば、他の特徴もあるだろうと勝手にひと括りにして判断する
(例)「頑固な人は怒りっぽいだろう」
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寛容効果
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好ましい特性についてはより高く、好ましくない特性についてはより低く判断する
(例)好感の持てる社員には実際以上に判断が甘くなり、あまり好きでない社員には実際以上に判断が厳しくなる
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アンカリング
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ある事象の評価が、参照点として与えられた情報に引きずられてしまう
(例)最初から3,000円の商品と、5,000円の定価が3,000円に値下げされている商品があると後者の方がお徳に思える
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次の図を見て下さい。
○の段と×の段が横方向に交互に並んでいると見る人もいるでしょうし、縦に○と×が交互に並んでいると見る人もいるでしょう。これを斜めに○と×が交互に並んでいると見てもよいはずですが、そのようにとらえる人は少ないと思います。多くの人は、横の○あるいは×の並びか、縦の○×交互の並びととらえるでしょう。その方が「まとまり」として無理なくとらえることができるからです。
このように、含まれる要素が単独ではなく複数ある場合には、人はこれをまとまりやすい配列でとらえるという、群化あるいは知覚的体制化とよばれる傾向が存在します。まとまりとしてとらえるということは、情報を効率よく処理することができることにつながります。短い時間に判断しなければならない場合には、このような情報処理のやりかたが効果を発揮します。
思いこみ心理にも同様のメカニズムの働いていることが考えられます。A、B、Cという要素を別々に処理するのではなく、一つにまとめて処理できれば、それだけ素早い判断ができます。ステレオタイプや包装効果などの思いこみ心理は、その代表的な例といえます。もちろん、こうした判断がすべて間違いであるとはいえません。人それぞれの経験からつくられる判断枠組みの中には、かなり的を射たものもあるでしょう。ただ、こうした判断だけに頼ると、まさに「思いこみ」が先行してしまって正確な実像をとらえ損ねることにもなりかねません。
もう一つ例をあげましょう。これは誰もが陥る錯覚現象です。並んでいる2本の線は同じ長さですが、両端に付いている矢羽根の向きによって線の長さが違って見えます。この錯覚現象(「ミュラー・リヤー錯視」)を知っていてもそう見えるのですから、知らなければ線の長さが同じであるとは気がつきません。
私たちの判断には、思いこみや錯覚が入り込みやすいということに注意しましょう。前のめりの判断をしていないか、心理的な錯覚にとらわれていないか、最終判断の前にもう一度振り返ってみることが大切です。