~信頼できるリーダー~
リーダーはメンバーに対してさまざまな影響力を行使するパワーを持っています。しかし、その影響力がメンバーに受け入れられるためには、メンバーから信頼される存在でなければなりません。
では、信頼されるためにはどのような条件が求められるでしょうか。心理学者のバトラー(K. Butler)は、部下から信頼される上司の条件を以下の10個にまとめています。
信頼形成の10条件(バトラー)
条件 | 例 |
---|---|
1. 接触可能性availability | 必要な時にはいつでも会える |
2. 有能性competence | 仕事上の判断が的確である |
3. 一貫性consistency | 言う事とする事が一致している |
4. 慎重さdiscreetness | 口が堅く安心して相談できる |
5. 公正性fairness | 誰にでも分け隔てのない対応をする |
6. 誠実さintegrity | 何事にも誠実に対処する |
7. 忠実さloyalty | 自分が不利になってもかばってくれる |
8. 開放性openness | 自分の考えを隠さずオープンに言ってくれる |
9. 約束の履行promise fulfillment | 約束したことは守ってくれる |
10.受容性receptivity | 言うことを真剣に聞いてくれる |
角山剛らは、この10条件をもとに作成した質問項目を用いて、上司への信頼感と会社へのコミットメントを探る研究を行っています。この研究では、質問紙調査で得られた部下からの評価に基づいて、上司の行動を6つのカテゴリーに分け、それぞれが部下からの信頼感にどの程度影響しているかを見ました。
上司の好ましい行動については、「仕事に精通し部下の力になる」「誠実・公正に部下に対応する」「オープンで率直である」の3つのカテゴリーに分かれ、これらのカテゴリーに含まれる行動がよく見られるほど、部下からの信頼も篤いという結果になりました。
一方、上司の好ましくない行動は、「事なかれ主義で頼りない」「部下の尊厳を傷つける」「保身と出世しか考えていない」の3カテゴリーに分かれ、これらのカテゴリーに含まれる行動がよく見られるほど、部下からの信頼を損ねていることが明らかになりました。
さらに、上司の行動が信頼形成条件を満たしている場合、上司に対する部下の信頼感が高まり、それが勤続意思を強めるという連鎖も成立していました。
部下のやる気を鼓舞し、組織へのコミットメントを高める上でも、信頼できるリーダーを目ざすことが大切です。