~ストレスとソーシャル・サポート~
ソーシャル・サポートとは、社会における人とのつながりの中でもたらされる、精神的あるいは物質的な支援であり、この支援をうけることがストレスを緩和する効果をもたらすと考えられます。ソーシャル・サポートがもつストレス緩和効果には2種類の説があります。一つは、晒されているストレスの強弱にかかわらず、ソーシャル・サポートを受けることが心身の健康に直接好ましい影響を及ぼすと考える説であり、直接仮説とよばれます。
もう一つは、ソーシャル・サポートが緩衝材の役目を果たして、高いストレスが及ぼす悪影響を緩和するという説であり、ストレス緩衝仮説とよばれます。この説では、ストレスが低い状況ではソーシャル・サポートの量は心身の健康状態に大きく影響することはありませんが、ストレスが高い状態では、ソーシャル・サポートが多いほどストレスの悪影響を緩和することができると考えます。
ソーシャル・サポートの種類にも複数があります。よく知られているものとしては、ハウス(J. S. House)による4分類があります。
① 道具的サポート:金銭や必要なものを貸し与えたり、直接力を貸すといった、実際的なサポート。
② 情報的サポート:当人が自分で問題の解決にあたることができるよう、必要な情報や知識を提供するサポート。
③ 情緒的サポート:励ましたり、愚痴を聴いたり、相談役になったりなど、情緒面でのサポート。
④ 評価的サポート:当事者の行動が、良いか悪いか、社会的に好ましいか好ましくないかなど、適切な評価を与えるサポート。
こうしたサポートは一人が行う必要はなく、それをできる人が力を貸すことで効果も高まります。職場でいえば心身の不調に悩んでいる人に対して、上司や同僚が適切なサポートをすることが期待されます。周囲からの適切な働きかけ、あるいはそうしたサポートが受けられる組織に身を置いているという感覚そのものが、ソーシャル・サポートとなります。
最近は産業カウンセリングも浸透してきています。産業カウンセリングでは、仕事、職場の人間関係、家庭問題などでの悩みに対して、心理学的な視点から対応へのヒントを与え、最終的に自らの力で問題解決に至る道筋を見つけるようサポートします。産業カウンセラーは、職場や仕事におけるソーシャル・サポートの専門家ということができます。心身の不調に悩む人が増加している現代にあって、その役割は今後さらに重要になってくものと思われます。