~リーダーに求められる要件~
リーダーは資質をもった者だけが選ばれるという考え方に対して、誰もがリーダーになれるという考え方があります。リーダーシップ指南書とでもいうべき書籍が毎日のように出版されていますが、そうした中にはリーダーになるためのアドバイスやヒントが多く紹介されています。すべてが誰にも役立つというものでもありませんが、興味深いリーダー観、リーダーシップ観も少なくありません。
こうしたリーダー観でよく知られているものに、GE(General Electric)社のCEOであったジャック・ウェルチが当時提唱した“4Es”があります。“4Es”とはリーダーに求められる要件であり、
Energy: 新しいことに挑戦しようとするエネルギーに満ちている
Execution: 行動に移すことができる
Edge: 自分自身の考えをもち、確固たる決断や行為がとれる
Energize: 周囲に力を与え元気にできる
の4つを指します。
こうした“E”で表されるリーダーの要件は他にもあります。たとえば組織研究者のナドラーは、Envisioning(明確なビジョンを描くことができる)、Empowering(メンバーがもっている力を引き出すことができる)、そしてEnabling(変化や変革を具体的に実現できる)の“3Es”をあげています。もう一つ紹介すると、かつては世界有数の電子・通信機器メーカーで会ったモトローラ社では、Envision、Execution、Edgeに加えて、Energine(周囲を元気にできる)、そしてEthics(倫理観をもっている)の“5Es”が掲げられていました。
また、“E”でまとめられるものではありませんが、リーダーシップ研究者のベニスは、「指針となるビジョン」「情熱」「誠実さ」「信頼」「好奇心と勇気」の5つを、リーダーが備えるべき要素としてあげています。
これらはいずれも、リーダーが効果的にリーダーシップを行使するための要件といえますが、しかし決して生得的なものではなく、誰もが努力次第で身につけることが可能です。ベニスもその著書の中で上記の5要素を紹介しつつ「ここには変えることのできない生得の特質などひとつもない」と断言しています。
結局、リーダーとは生まれつくものではなく、努力の過程でなっていくものであるといえます。つまり誰もがリーダーになる可能性をもっているということなのです。冒頭に触れたたくさんのリーダーシップ指南書は、そうした可能性を開花させた人たちの努力の過程として読めば、また面白さも違ってくるかもしれません。